当院では尿失禁や過活動膀胱に対する新しい治療法、「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法(ボトックス療法)」を行っています。
この治療法は2000年に海外で初めて報告され、高い効果と安全性から広く普及しています。日本では2020年から保険適用となりました。
ボツリヌス毒素は、膀胱の筋肉の異常な収縮を抑え、筋肉を柔らかくする働きがあります。
内服薬で十分な効果を得られない方に適した治療法です。
こんな症状でお悩みではありませんか?
- 急にトイレに行きたくなる
- 我慢できずに漏れてしまう
- 夜中に尿意で目が覚める
- 頻繁にトイレに行く
- 外出中や仕事中でもトイレが気になる
ボトックス療法の特徴
ボツリヌス毒素を膀胱に直接注射します(日帰り可能)。
2日目ごろから効果が現れます。ただし、症状を緩和する対症療法であるため、効果の持続期間を過ぎると弱まります。
年に1~2回の注射で効果を維持できます。
日本の臨床試験では、尿失禁が半減した方が約60%、完全に治った方が約20%確認されています。また、頻尿や切迫感の改善も期待できます。
治療対象となる方
以下の条件に当てはまる方が治療の対象です。
- 3か月以上試したが改善しない。
- 2週間以上内服したが、副作用で服薬を中止した。
- 1日7回以上の頻尿や、1日3回以上の失禁がある場合。
治療の流れ
初回診察と検査
診察内で膀胱炎などの尿路感染症がないかを含め、必要な検査を行います。
その後、ボトックス療法について具体的な説明、注射予定日の相談、注射当日の昼から内服していただく抗菌薬をお渡しします。
治療当日
ご自宅
朝食は通常通りお取りください。水、お茶も摂取可能です。
ご来院
来院後、内服薬・体調確認・同意書の確認を行います。
同意書は、クリニック受付にて提出してください。ご説明後、血圧・体温測定を行います。
検査準備
検査前の痛み止めとして、坐薬を一つ挿入し、点滴を始めます。
その後、検査台に仰向けに寝ていただき、酸素モニターを付けさせていただきます。
局所麻酔
細いカテーテルを膀胱内に挿入し、膀胱内を空にしてから膀胱に局所麻酔を膀胱内に注入します。麻酔薬を効かせるため、20分程度仰向けで待機して頂きます。
治療

膀胱内に軟性膀胱鏡を挿入し、生理食塩水を注入し膀胱を適度に膨らませます。専用の細い注射針を内視鏡に通し、膀胱壁内の20~30か所、筋肉にボトックスを注入します。
手術時間は10~20分程度です。
膀胱鏡を抜き、治療は終了です。
治療終了後
帰宅前までに、排尿していただき、血尿状態を確認させていただき、終了となります。 ※排尿困難感が強い場合は、導尿(管を入れて排尿)させていただく場合があります。
ご帰宅
ご帰宅後は、血尿が出ますので当日はご自宅で安静にし、処方された薬を飲んでいただきます。夜間、連絡先をお伝えしますので、何かの際には遠慮なくお問い合わせください(真っ赤な血尿や、38度以上の熱が出た場合など)。 治療後、1週間程度は、アルコールをお控えください。 また、自転車・バイクの運転もお控え下さい(出血を予防するため)
経過観察
治療1~2週間後に再診し、残尿量の測定や効果の確認を行います。
その後、患者さんの希望に応じて1~3か月ごとに経過観察を行います。
我慢できない尿意がよく起こる方はご相談ください
最近の報告では、排尿困難をきたした人は3.4%、尿路感染症(尿中の白血球増加あり、症状は問わない)は2.9%、尿閉が2.4%と報告されています。
多くの患者さんにとって生活の質(QOL)を向上させる有用な治療法です。
実施件数(2024年3月~12月)
- ボトックス膀胱壁内注入療法:7件
どんな小さな不安や疑問でも、お気軽にご相談ください。
ボトックス療法が、あなたの症状改善のお手伝いになれば幸いです。
- 引用:グラクソ・スミスクライン