2003年に日本排尿機能学会によっておこなわれた40歳以上の男女1万人を対象とした郵送によるアンケート調査によると、尿失禁で困っている方は女性で43.9%、男性で17.6%となっています。
そのうち、医療機関への受診率は、女性が9.0%、男性が27.4%と女性の受診率が圧倒的に低いのが現状です。
「恥ずかしい」、「年齢的に諦めてるし、仕方ない」という理由で、受診されない方が多いのですが、【生活習慣を見直す】、【正しいトレーニングをおこなう】、【お薬を飲む】ことだけでも生活の質が改善します。
まずはお気軽にご相談ください。
尿失禁の種類と症状
尿失禁には、以下の種類あります。
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁では、重いものを持ったときや、咳をしたとき、立ち上がったときにおしっこが漏れてしまいます。
腹圧性尿失禁は、骨盤臓器脱が原因で起こる場合があります。
骨盤臓器脱の分類
出典:骨盤臓器脱の分類(日本老年医学会雑誌2013;50:454)
POP-Q法によるStage分類
stage | 定義 |
---|---|
0 | 下垂なし |
Ⅰ | 最下垂部位が処女膜より1cm奥まで達しない |
Ⅱ | 最下垂部位が処女膜より1cm奥~1cm脱出の間 |
Ⅲ | 最下垂部位が処女膜より1cmを越えて脱出するも(全膣管長-2cm)を越えない |
Ⅳ | 最下垂部位が(全膣管長-2cm)を越えて脱出。または完全脱出 |
切迫性尿失禁
急におしっこがしたくなり、我慢できずに漏れてしまいます。
溢流性尿失禁
おしっこをしたいのにうまく出すことができず、膀胱におしっこがたくさん残ってしまうため、漏れてしまいます。
機能性尿失禁
機能性尿失禁では、排尿の機能は正常ですが、認知症や運動機能の低下が原因となり、漏れてしまいます。
尿失禁の検査
- 視診:膀胱や子宮が外に飛び出しているかどうかをみる検査です。(骨盤臓器脱の有無を確認する検査です。)
- 尿検査:尿の成分をみるための検査です。尿に濁りがあったり、血液が混ざっている場合は、尿路結石や膀胱がんが隠れている可能性があります。
- 尿流動態検査:尿が溜まった状態や、排尿しているときの状態を観察して異常がないかを調べる検査です。
- 膀胱鏡検査:膀胱や尿道の状態を観察するための検査です。
治療
腹圧性尿失禁
軽い腹圧性尿失禁に対しては生活指導、骨盤底筋体操の指導や、お薬での治療をおこないます。
骨盤臓器脱では手術療法が必要な場合があります。
StageⅡ以上の骨盤臓器脱があり、腹圧性尿失禁や、排尿困難をきたす場合には、骨盤底筋体操や薬物療法だけでは困難な場合があります。
その場合は、骨盤臓器脱の手術の前に初期治療としてリングペッサリーという方法もあります。
当院では、希望がある患者様に対して、リングペッサリー挿入をおこなっておりますので、ご相談ください。
切迫性尿失禁
お薬での治療をおこなっていきます。
お薬での治療でも症状の改善がない場合には、ボトックス注入療法などが必要になる場合もあります。